2005年を振り返る

晦日ともなるとテレビ、新聞、日記、どこに目を向けても話題は2005年の総括一色だ。
人間はかくも反芻する生き物なのかという気もしてくるが、僕も過日SINGLESマスター史をリストアップしているあたり、そこは同じく囚われの身にある一人なのである。
さりとて今年は趣味分野に取り立てて動きの見られなかった年ということもあって(音楽などこれほど聴かなかった年はない)、それならばいっそ関心の持ちようがない分野を敢えて振り返ってみることにしようと思う。
以下2005年の調髪事情を振り返る。


■1/14
いつも予約をせずに行くために一時間ほど待たされる。
「長さは大体そのままで、後ろをすいてもらえますか」
いつものように曖昧なリクエストを出すと店長は直ちにカットにかかる。
この注文が形ばかりのものだということは僕も店長もよく知っている。
僕は散髪したという実績が欲しいだけだし、店長は僕がいかなる成果も甘受すると知っているので明らかに手を抜くのだ。
果たして出来上がりはいつももみあげの長さが左右不均一だったり前髪だけ物凄く凄く長かったりするのだが、それは決して改められることなく慣例行事のごとく脈々と繰り返される。
帰宅して母に「どこ切ったん」と尋ねられる。


■4/16
「長さは大体そのままで、後ろをすいてください」
帰宅して母に「どこ切ったん」と尋ねられる。


■7/3
「長さは大体そのままで、後ろをすいてください」
占いに明るくはないが僕はきっと変化よりも安定を好む天秤座なのだろう。
帰宅して母に「どこ切ったん」と尋ねられる。
母はマイペースで誤解しやすいみずがめ座なのだと思うことにした。


■9/15
思い切って「今日は短かめでお願いします」と言ってみる。
旅行を前にしてエキゾチックな変身を渇望する機運が高まっていたのだ。
「特に後ろはざっくりすいてください」とお願いすると、
「え?すく、ってどういう意味かおわかり、ですよね?髪が減るってことですよ?いいんですよね?ヒャヒャヒャ」と大変嬉しそうである。
確かに最初に自虐ネタを口にしたのは僕だったが、それは薄毛進捗状況に対する忌憚ない率直なご意見を聞き出すのに止むを得ないものだった。
どうもこの店長はいささか図に乗り過ぎるきらいがあるらしい。
「うわー、すっごい毛量ですよねえ」
いかにもネタ振りだと言わんばかりの意味あり気な口調。
スルーするわけにもいかず、渋々応じる形で「横と後ろだけがね」と返してみたところ、店長はカットする手を止めるとゆっくりと言い聞かせるような口調でこう言い放った。
「いいえ。村田さんのトップは薄いんじゃなくて毛が細いんです」

そんなやりとりを苦に僕の足はかれこれ4ヶ月近くも遠退いている。
とは言え店長をつけあがらせてしまったのは一重に僕と僕の毛の責任だ。
今後店長に劇的な心境の変化が訪れない限り、粛々とザビエり行く僕の毛髪周辺への執拗な弄りは来年も収まりそうにないのである。

ぽっくっくのクリスマス・ウィッシュ

当日、来店して下さったお客様が次々と日記にしてくださり随分経つこの時期に遅ればせながらごってりとしたレポートを。
クリスマスイブということでそれなりに企画らしいことは出来たはずだが、結局僕達ぽっくっくの二人は特に打ち合わせらしい打ち合わせもすることなく当日を迎えていた。
唯一決め事にしていたサンタ帽もペコリさんの買って来てくれた既製サイズでは僕の図抜けた頭周りを優しく包んでくれやしせず、曲芸じみたバランス感覚の持続が僕の首筋あたりに悲鳴をあげさせるので、結局ほとんどの時間被ることはしなかった。
来店されるごとに言うはずだった「メリーぽっくっく」もすっかり忘れてしまい早くもグダグダ感が店内を包む。

がらんとして静かな開店直後のSINGLESのドアを開けたのは、この日もマリニさん
いつもお洒落なマリニさんだがこの日も素敵なモッズスーツを召してらした。差し入れに頂いたトルティーヤスナック3種は、店内で開封されることのなかったチーズ味が一番の美味だったとポクロ家の者が口を揃えて申しておりましたことをこの場を借りてお伝えします。ありがとうございました。

ペコリさん手製チョコケーキとキャラメルフレーバーのコーヒーを美味しく頂いていると(このケーキは無料でふるまわれた)、程なくして乙女バーに続いてのご来店となるがっすぃさんが到着。
全く創意工夫の見られないクリスマスしか届ける事が出来ないマスター二人にプレゼントを持参してくださった。 僕には不穏な揶揄が見え隠れして仕方ない天津甘栗と、9月にお求めになられたというカステラを。

3ヶ月の時を隔てて完全にカチカチの高野豆腐と化したその逸品は、一部にカビまで蓄えた年期の入り具合だったが、それは決して悪意のないものだったと信じているし、クリスマスとは許し合える日だいう風に聞かされている。

そしてクロエさんとウメさんが連れ立ってお越しになられた。
ちょうどその時、腹をすかせたマスター2匹が出前を取って雑炊と丼を貪っていたのだが、これほどクリスマスらしからぬ光景を持ち込む二人にクリスマスイベントをする資格があったものか、今となっては甚だ自信がない。 クロエさんは相変わらずの美貌と女神のごとき慈悲深き御心でいらっしゃったが、それに乗じるようにして皆の注目を集めた状態で大掛かりに年齢当てクイズ開催と、出るところに出れば大変なことになる失礼の連続ですっかり反感を買ってしまった。でも、でも、みんなびっくりするんですもん。

ウメさんはどうも僕と同じく社会的にアレな立ち場でいらっしゃるようだったので、つい「まだ若いから大丈夫ですよ」などと年長風吹かせた口を叩いてしまったが、今思うに僕こそが一番社会的にアレだという
ツッコミが各自の心中でなされていたに違いない。

「ポックンお腹どうしたん!めっちゃ出てるやん!びっくりした」 普段は数の少ないキカンボ君から驚きを隠せない様子で指摘されるとさすがに僕も気恥ずかしくなってくる。 身重だという言い訳が通用しない自らのセクシャリティをこの時恨めしく思った。
さて、キカンボ君との3月の初対面時に「ポクロさんと雰囲気の似た友達がいるんですよ。でも友達の方がかっこいいですけど」と聞かされて以来、僕の脳内で眼鏡男子の座を争って激しくおしくらまんじゅうを繰り広げて来た仮想敵nomusi君がお越し下さるという事前情報を得てこの日は気もそぞろだった。
眼鏡男子の地位を危うきものにする未知なる眼鏡の登場にすっかり焦りを隠しきれない僕は、SINGLESへ向かう道すがらペコリさんを質問攻めにして「すごくかっこよくておしゃれさん」なる芳しくない噂を引き出していたのだが、まさかこれほどまでとは、という素敵眼鏡男子だった。
ひーちゃんさんと連れ立って来られたakiyoさんが「岸田繁に似てますね」と話しかけておられたがまさに同感である。
ウメさんの大きくてらっしゃるお声をシャッター音の隠れ蓑に、何度も盗撮を試みたのだがその企みは果たされず、最後は懇願調でどうにか被写体となって頂いた。 後にnomusi君も僕を隠し撮りしていたと聞かされたが果たしてそれはお腹のぽっこりが際立ったひょうきん画像だったそうだ。 妊娠説が受け入れられないのなら季節外れのスイカを半玉隠していたという線で手を打ってもらえないか。

なぎら健壱に似てますね」
nomusi君に贈られた賛辞とは対照的に、akiyoさんの僕に対する第一声は初対面とは思えない辛らつなものだった。 このなぎら発言を境に僕とakiyoさんとの間にはグランドキャニオン級の断絶があからさまに見てとれたはずだ。
かつて僕を泉ピン子呼ばわりした不遜発言の第一人者ぎぃやまさんがお二方の近くに腰を下ろすと、そのエリア周辺に対する僕の憎悪はいよいよ隠しきれないものとなった。 オーダーを受ける度に勃発する激しい睨み合い。
時にはオーダーを拒否、時には「みんな死んだらええねん」と世を呪う発言まで飛び出して一触即発の雰囲気。
しかし夜も更けて多少眠たくなると荒んだ僕達の心にも平穏が訪れ、やがて「まーちゃん」「あきちゃん」と呼び合うほどに僕達のわだかまりは消え去ったのであった。
ひーちゃんさんは一見するとのほほんとした空気を醸しておられるが、ことお笑いの話題になると身を乗り出して激しく食い付くなど飾らないアグレッシブネスが周囲の心を捉えて離さないお方だった。

ぎぃやまさんに頂いたケーキは希望者殺到のため僕はクリームを少し舐めただけ。しかし僕の不手際によりぎぃやまさんは一かけらも口もすることが出来なかった事を愚痴ることしきりでかなり根に持っているのではないかと推測している。

「今日は一杯だけ」と言って止まり木に腰掛けたたかしやまさんだが終電を逃してヤケになると、ギターを手に取ってサニーデイ「恋に落ちたら」FISHMANS「BABY BLUE」を弾き語ってくれた。
たかしやまさんには夜も深まり朝が近くなったあたりからカウンターに入ってもらうわ、閉店作業を手伝ってもらうわでお世話になりっぱなし。ありがとうございます。
始発までの時間、ペコリさんのフレーバーコーヒーを飲んだり、キリンジライブ
DVD、小島麻由美PVを流したり、まったりと時間を過ごす。 しばたはつみ「シンガーレディ」、EVA「MOON RIVER」の反応が良かったのは嬉しかった。

さてSINGLESとして喜ばしいことに、ひーちゃんさん、akiyoさんのお二人がSINGLESに興味を持ってくださったご様子で近々説教バー(マスターになるための講習)を受講されるとのこと。
そしてキカンボ君も本気でマスターデビューを考えておられるという。
ぎぃやまさんはいち早く8月の『ソフトロック〜想い出の日曜日〜』でマスターを手伝って頂いたが、先日説教バーを講習されて晴れて正式マスター登録を済ませたばかりで、2006年も新しいマスターが誕生しそうだ。

みなさん、またSINGLESでお会いしましょう。

高橋は高橋

poqrot2005-12-27

年の瀬に乗じて書店員が仕掛けた高橋を貶める罠。それも奥歯に物の挟まったようなニュアンスで誹謗中傷にあたらない程度にやんわりとくさしてくるあたり実に巧妙である。一体何がそうまでして売り子を高橋バッシングに駆り立てるのか、いぶかりたくもなるところだが、実は心当たりが全くない訳でもない。

先日、見知らぬ人物からのメールが舞い込んだ。本当であればこのメールは開封することなく削除されるべきものだった。なぜならば発信者名が浅岡美麗だからである。
僕の知る限り浅岡美麗類名義で接触を試みる人物の目的は一つしかない。しかし『貴方ですか?』という件名に覚えた胸騒ぎに似た感情、および貴乃花親方に似た感じに僕は抗うことが出来なかった。

「もう貴方しかいないと思いメールさせて頂きました、
 高橋といえばわかりますか?」

高橋。そう聞いて僕の頭に浮かんだのは以前バイト先にいた60代男性・高橋だけなのだが、よしんば彼が浅岡美麗を名乗って事後報告的に特殊な性的嗜好のカミングアウトに精を出しているのだとすれば、ここは保身のためにも無言を貫かねばならないところだ。しかし携帯電話との離別理由の約半分を置き忘れによる生き別れとするうっかり過多な人生経験から「もしかして覚えていない誰かかもしれない」という疑念を払拭することができなかった。

「突然のメールで戸惑っております。
 どちらの高橋様でどちらをご覧になってメールくださったのでしょうか?」

迷いながらも恐る恐る返信したメールはおかしなことに「failure delivery」として舞い戻って来た。
不審に思いながらもそのままにしていると翌日、再び浅岡美麗から新着メールが届いた。

「私のメール、調子が良くないようです。
 もしかして返信してくださっていたらごめんなさい。
 こちらの掲示板に書き込んでくれますか?
 お金はかからないので安心して下さい」


それからも美麗からの便りは絶えることはなく届けられている。

「どうして??どうして返事貰えないんですか?全部しってるのに。
 今から貴方の情報全部、、掲示板に乗せちゃいますから。
 <中略>抱いて下さい」

「先ほどは言い過ぎました。後悔しています
 <中略>抱いて下さい」

時には脅迫と欲情。時には落胆と欲情。相反する複雑な心境がまみえるメールに僕は毎日目を通し続けている。これは浅岡美麗に返信した者が背負わなければならない十字架なのだ、という諦念の下で。

人はとかく高橋に心惑わされやすい生き物である。言い方を変えれば、僕達は良くも悪くも高橋という生き物に踊らされて生きているということかもしれない。

国会のメリークリスマス

日本中を揺るがす耐震偽装問題で遂に姉歯一級建築士らが国会で証人喚問された。僕はこの模様をニュースでしか見ていないので、彼がどのような答弁をしたかまでつぶさに知る訳ではない。しかし衆議院に現れた姉歯氏の姿から今回彼が嘘偽りなく真実を語ろうとしていることだけは看てとれた。
それはイギリスの法廷で今も用いられる中世風のウィッグを彼が自発的に身にまとっていることから明らかだ。
確かに彼一流としか言い様のない着こなしはウィットに富み過ぎている上、本来裁判官や弁護人が着用すべきを参考人ながら使用に踏み切ったあたりTPOを全面的に誤解していると言えなくもないが、言い逃れに終始した他の証人にはなかった確固たる決意の塊が少なくともあの瞬間彼の頭の上にはあった。
その一方で危惧されるのは、よくよく目を凝らしてみた時にフサフサの毛の中に埋もれた目玉を見出してしまう可能性である。もし彼がモリゾールックに身を包んで喚問に臨んでいたのだとすれば、コスプレイヤーである前に参考人であるべきだったとの誹りは免れまい。
いずれにしてもユーモアとペーソスを証人席に持ち込んだ手法がうっすら気に障らないでもないだろうが、どうかそこはクリスマスシーズンに免じファーの帽子と見なしてシャンメリーと共に水に流してはくれまいか。

僕とシングルズ

これまでSINGLESについてあまり語ることをしてこなかったので、ここらあたりで触れてみよう、そう思っていたらペコリーナ(旧姓くっく)さんが先んじる形で日記にしたためてしまわれた。
SINGLESとの出会いやマスターユニット「ぽっくっく」についてご興味を持たれた方がおられたら、そちらこちらをご参照頂くことにして、ここでは自らのマスター史を紐解く作業も兼ねてセルフ・ライナーノーツとしけこんでみよう。



2004年
■12/31【さよなら2004 さよならタワーレコード】 ムラタ
日付上のタワーレコード在職最終日からつけたタイトルだが、企画としてはまったくもって成立していなかった。とはいえ元同僚のマコさん、popcorn君、サンさん、ニワさんらが駆けつけてくださってタワー色を彩ることには成功したと信じたい。
レシピもないままにこしらえたぜんざいの甘さは誰もが閉口する超絶糖度で、以後このメニューには一切手を出さないようにしている。
日付が変わった深夜バンビさんが駆けつけてくださった。


2005年
■1/6 【※タイトル思い出せず】 ムラタ
直前になっても埋まらないシフトを見て、新人ならではのがむしゃらさを発揮してみたのだが、繁昌しなかったという負の記憶を除いて、この日起こった一切合切の思い出が欠落していることに気づく。


■1/27 【ポクロバー】 ムラタ
営業時間の一部をマコさん、蟹ィさん、 ユンさん、タカイくんのマスター研修に充てた変則営業。その影響もあって繁盛した。
みきさん初来店。


■2/20 【エセモッズバー】くっく+ムラタ
モッズバーとして始まったぽっくっくの初陣だが、これは僕の圧倒的モッズ力の不足によって以後立ち消えたとなっている。


■3/3 【ひなまつりバー】ムラタ
当初一緒に入る予定だったペコリーナさんがインフルエンザとなってソロ活動。ペコリーナさんは療養中の身でありながらお客さんとして顔を出してくれた。ひなあられとケーキを出したことは覚えているがこれまた企画としては未完の印象が色濃い。


■3/30 【くっく卒業おめでとうバー】くっく+むらた
留年を危ぶまれながら卒業したペコリーナさんを祝った、言わば私的集い色の濃い一日だった。
この日、初来店したキカンボ君がユニット名「ぽっくっく」の名付け親に。彼はその後ぽっくっくのロマンチックに甚大なる影響を及ぼすことになるのだがそれは後述する。
オシャレ眼鏡マリニさんも初来店。
たかしやまさんの美声が響いた深夜の時間帯も印象的だった。


■ 5/16 【メス猫バー】むらた+くっく
chloeさん、ウメさんと2月のキリンジナイト以来の再会。
この数日後、ミクシィ上からもSINGLES上からも失踪し関係者各位に甚大なるご迷惑をおかけしてしまう。


■8/16 【やるっきゃナイト】パピ+ムラタ
岡田あーみんナイト」の着想から派生したパピさんによる80年代トリビュート企画。
「タッチ」、「お父さんは心配症」などの単行本が並び、BGMには杉山清貴来生たかおが流れる80年代の空気に包まれた好企画だったがあいにく客足が鈍かったことが悔やまれる。
マイナーチェンジして再度試みたい思いは強い。


■8/28 【ソフトロック〜想い出の日曜日〜】ムラタ+ぎぃやま(id;yammy2)
シングルズに興味を示されたぎぃやまさんをサポートに迎えて初めて企画らしい企画。ロジャニコ、バーバンク、ミレニウム周辺からジャズ、ブラジルにわたってソフトサウンディングな音一辺倒。
いつも後家役を務めてくださるももほさん、そしてハテさんとも初対面。
ぎぃやまさんは後にマスター研修を受講、晴れて正式マスターの一員に。


■9/2 【メス猫バー】ぽっくっく
この時はまだマイミクではなかったソルティーヌさんが来店。
彼女の日記のファンであることをお伝えしたのは決して頂いた差し入れのせいばかりではない。
この日、福岡から出張でこちらに出向かれる砂糖子さんの来店をお客様に喧伝していたところご本人より体調不良により行けない旨の電話が。ウキウキした様子から一転して奈落の底に突き落とされるピエロぶりをお客様、ペコリーナさんに笑われながら謝り続けられた恥辱の10分間。そしてこれが翌日運命の「鍵はポストに入れておいて」事件へと結実する。


■10/19【乙女バー】マコ*ポクロ
元同僚であり乙女部でもあるマコさんと「乙女らしさ」を掲げて臨んだ初コンビ。これまたケーキを出したりいつもと同じような乙女色のバーに。がっすぃさんが初来店して弾き語る。


都合11回。途中失踪など問題行動を重ねて関係者各位に大変なご迷惑をおかけしたものの、なんとかここまで月1回ペースを保ってきた。そしてちょうど1年で12回目となる次回マスターの日程が決定した。


 12/24(土)【ぽっくっくのクリスマス・ウィッシュ】
            OPEN:19時予定

よりによってクリスマスイブである。
詳細はまるで煮詰まっていないもののこれまでの二人の無計画を鑑みれば、クリスマスと聞いて誰もが思いつく安直な行動にあらかた手を染めるのは必至と思われる。
「イブ時にシングルズに来店する人は概ねシングル」
三十路を越えて拍車のかかる駄洒落フィーリングだけが一人歩きして敢えてこの日を選択させる迷走に至った訳だが、無論シングルに限らず恋人(ル・クプルと呼ぶ事にしよう)、変人、大家族等、およそ人型をとどめる生けとし生けるものすべてのお越しを心待ちにしていることも声を大にして言いたいところである。
よしんばそこにステレオタイプなクリスマスイブに警鐘を鳴らす啓発セミナー的危険臭を嗅ぎ取られたとしても否定しようとは思わない。
実際、既に参加の意志を表明してくださっておられる女性の中には、平素「彼氏いない」発言をしている女子を誘うことで踏み絵的効果を期待される呪術めいた思想の持ち主もいらっしゃる。
また結果的に独り者の集いのような事にでもなれば、僕とて過去に並外れて長い大学在籍期間から類似性を指摘されたスーフリのワダさんめいた出会い系サークル主宰の役割に身を窶す覚悟もないではない。
あるいは「特別な日と騒ぐのはマスコミだけで365分の1日でしかないよ」と開幕戦を迎えた名監督に通じるイブ観をお持ちの方もおられるかもしれないし、年の瀬も押し迫ったこの時期だけに忘年会としての機能を期待される方がおられても不思議ではない。
当日行く宛のない方々はどうか恥ずかしがったりせずに、SINGLESの扉を叩いてみてはいかがだろうか。
きっとそこに十人十色のクリスマスイブがあるはずだ。


さて、本人の了承を得たので公にしても構わないと思うがペコリーナさんもここシングルズで愛を育んだル・クプルの一人(藤田恵美)である。そしてもう一人のル・クプル藤田隆二)こそ先述のキカンボくんである。僕はこのル・クプルの二人を総称してペコリンボと呼ぶことにしている。
3月の「くっく卒業おめでとうバー」で初対面を果たした二人は、5月の「メス猫バー」で再会を果たし急接近したようだ。閉店後3人で向かった漫画喫茶のフラットスペースで、睡魔に抗えず眠ったところを二人に手荒くテレビ台の下に押し込まれた上、冷水を浴びせられるという仕打ちを僕は一生忘れないだろう。


さてここからする話は墓場まで持っていくつもりでいたが、この機会に話しておこうと思う。
先日、二人で暮らし始めたと聞いて一乗寺のお部屋に遊びに行った。
終電を逃して泊めてもらう事になった深夜の3時頃だったろうか。
なんとはなしに目を覚ますと二人の話し声が耳に入ってきた。

キカンボ 「ぽっくん好きやわあ」
ペコリ  「えー32やで」
キカンボ 「ラーメンズのDVD見てる時の顔見た?
      めっちゃ楽しそうやったで。
      すんごいタレ目やったしさあ。口開いてたやろ?」
ペコリ  「うふふ」

思いがけぬキカンボ君の告白に動悸を押さえ切れない僕は、そのまま朝まで眠ったふりを決め込んだ。
あの夜から僕の中に息吹いた女心がしなを作って悩ましく溜息をついているが、その告白はイブの夜まで置いてある。

監督として

ヤクルト・スワローズの古田敦也選手が来シーズンより監督に就任する。現場の最高責任者である監督と選手の兼業、所謂プレイング・マネージャーは野村克也氏以来29年ぶりとなる抜擢だが、これは野村監督の下で培われた野球観は勿論、プロ野球選手会会長としてオーナー側とやりあった手腕も高く見込まれてのことだろう。
スポーツの世界で監督兼業というのは稀なケースだが、他の分野に目を向けてみればそれほど珍しい事でもない。映画の世界では監督と出演を兼ねている人など枚挙に暇がないし、音楽で言えばセルフプロデュースがそれにあたるといったところか。
もっとも監督兼業だからといってその成果なり作品なりを全て監督個人の仕事と考えることは出来ない。
古田監督にしても裁量は彼に委ねられているにせよ、コーチ陣との分業体勢が整わなくして到底成し得ない大仕事である。

その一方でカントクを代名詞にまでしながら、およそ監督らしい仕事に微塵として携わる様子もない山本晋也氏のような人もいて僕らを惑わせる。サングラスにチョビヒゲをたくわえたこの小男が現場で辣腕をふるったという話を僕は寡聞にして知らず、見かけるのもせいぜいワイドショーの裏社会潜入レポートくらいだ。
それにしてみたところで怪し気な世界の住人を前に斬る刀もなく「すごいですねえ」と弱々しくイエスマンぶりを発揮するばかりで、見れば見るほど色褪せる監督感は、今やプリティ長嶋のそれと比べても大差はない。
彼の監督としての力量は永遠にベールに包まれたまま誰の目にも触れることはないだろう。

冷たい風

poqrot2005-11-30

社会問題となって久しいニートへの風当たりは強まる一方だ。うねるようにして押し寄せる排斥の波は遂に銭湯業界にまで及んだ。古くより憩いの場として市民に愛され続けてきたこの業界に「寛ぎ、団らん等の非生産的利用目的の使用お断り」の姿勢を一貫して打ち出すこのビジネス銭湯の登場はいささかエキセントリックであるに違いない。
しかしスーツを着さえすれば入店出来る高級レストランなどと違って、あくまでも商談とビジネスありきの但し書きは、暗に番台の見かけで判断しない中身重視の姿勢を表わしているようで好ましくすらある。
勿論、パリッとしたスーツに身を包む紳士然とした外見が番台の心証を悪くするはずはなかろう。
しかしアタッシュケースから取り出した手拭いを頭に乗せて、恍惚の表情を浮かべたきりただ湯舟に浸かっていると、ものの数分も経たぬうちに番台の瞳には怪訝な色が宿る。ましてやふやけた顔で口笛を吹き出したり臭気漂うあぶくを浮かべようものなら、ファースト・インプレッションで高まった期待ゆえに番台の失望もひとしおである。
結果この銭湯の軒先には素っ裸のままつまみ出される企業戦士が後を断たないという。濡れそぼったあられもない姿にスーツとアタッシュケースを投げつけられた彼らは、社会的地位にあぐらをかいて働かざる者にもニート同様手厳しい現実が待ち受けていることを四つん這いのまま思い知る。