監督として

ヤクルト・スワローズの古田敦也選手が来シーズンより監督に就任する。現場の最高責任者である監督と選手の兼業、所謂プレイング・マネージャーは野村克也氏以来29年ぶりとなる抜擢だが、これは野村監督の下で培われた野球観は勿論、プロ野球選手会会長としてオーナー側とやりあった手腕も高く見込まれてのことだろう。
スポーツの世界で監督兼業というのは稀なケースだが、他の分野に目を向けてみればそれほど珍しい事でもない。映画の世界では監督と出演を兼ねている人など枚挙に暇がないし、音楽で言えばセルフプロデュースがそれにあたるといったところか。
もっとも監督兼業だからといってその成果なり作品なりを全て監督個人の仕事と考えることは出来ない。
古田監督にしても裁量は彼に委ねられているにせよ、コーチ陣との分業体勢が整わなくして到底成し得ない大仕事である。

その一方でカントクを代名詞にまでしながら、およそ監督らしい仕事に微塵として携わる様子もない山本晋也氏のような人もいて僕らを惑わせる。サングラスにチョビヒゲをたくわえたこの小男が現場で辣腕をふるったという話を僕は寡聞にして知らず、見かけるのもせいぜいワイドショーの裏社会潜入レポートくらいだ。
それにしてみたところで怪し気な世界の住人を前に斬る刀もなく「すごいですねえ」と弱々しくイエスマンぶりを発揮するばかりで、見れば見るほど色褪せる監督感は、今やプリティ長嶋のそれと比べても大差はない。
彼の監督としての力量は永遠にベールに包まれたまま誰の目にも触れることはないだろう。