あの人の忘れ形見

poqrot2006-01-23

ふとした拍子に誰かを思い出すという事はままあって、その数秒後には思い出した事すら忘れてしまうなんて事もまた僕にはままあるのだけれど、今年に入ってから思い返す頻度が尋常でないせいで、遂には恋煩いと錯覚しそうなほど出ずっぱりの存在となってしまった大野和三郎という町長が滋賀県豊郷町にいる。
もちろんこれが戌年と無関係であろうはずはない。
人の死を他者の記憶からの消滅と定義すれば、大野町長はその犬然とした髪型ひとつで既に十二年おきに甦る命を手にした火の鳥である。
個性的とはこれほどまでに他の追随を許さない、あるいは許されたくないと思うほどの圧倒的な突出をして初めて口に出来る言葉だ。

僕も人々の記憶に留まり続ける道を選ぶのであれば、髪型を干支に似せる努力をしてみるのもいいとは思うが、それは生前の思い出がヘア一色に塗り変わるオセロゲーム的リスクも孕んでいて、とてつもなく躊躇われる。