ぽっくっくのクリスマス・ウィッシュ

当日、来店して下さったお客様が次々と日記にしてくださり随分経つこの時期に遅ればせながらごってりとしたレポートを。
クリスマスイブということでそれなりに企画らしいことは出来たはずだが、結局僕達ぽっくっくの二人は特に打ち合わせらしい打ち合わせもすることなく当日を迎えていた。
唯一決め事にしていたサンタ帽もペコリさんの買って来てくれた既製サイズでは僕の図抜けた頭周りを優しく包んでくれやしせず、曲芸じみたバランス感覚の持続が僕の首筋あたりに悲鳴をあげさせるので、結局ほとんどの時間被ることはしなかった。
来店されるごとに言うはずだった「メリーぽっくっく」もすっかり忘れてしまい早くもグダグダ感が店内を包む。

がらんとして静かな開店直後のSINGLESのドアを開けたのは、この日もマリニさん
いつもお洒落なマリニさんだがこの日も素敵なモッズスーツを召してらした。差し入れに頂いたトルティーヤスナック3種は、店内で開封されることのなかったチーズ味が一番の美味だったとポクロ家の者が口を揃えて申しておりましたことをこの場を借りてお伝えします。ありがとうございました。

ペコリさん手製チョコケーキとキャラメルフレーバーのコーヒーを美味しく頂いていると(このケーキは無料でふるまわれた)、程なくして乙女バーに続いてのご来店となるがっすぃさんが到着。
全く創意工夫の見られないクリスマスしか届ける事が出来ないマスター二人にプレゼントを持参してくださった。 僕には不穏な揶揄が見え隠れして仕方ない天津甘栗と、9月にお求めになられたというカステラを。

3ヶ月の時を隔てて完全にカチカチの高野豆腐と化したその逸品は、一部にカビまで蓄えた年期の入り具合だったが、それは決して悪意のないものだったと信じているし、クリスマスとは許し合える日だいう風に聞かされている。

そしてクロエさんとウメさんが連れ立ってお越しになられた。
ちょうどその時、腹をすかせたマスター2匹が出前を取って雑炊と丼を貪っていたのだが、これほどクリスマスらしからぬ光景を持ち込む二人にクリスマスイベントをする資格があったものか、今となっては甚だ自信がない。 クロエさんは相変わらずの美貌と女神のごとき慈悲深き御心でいらっしゃったが、それに乗じるようにして皆の注目を集めた状態で大掛かりに年齢当てクイズ開催と、出るところに出れば大変なことになる失礼の連続ですっかり反感を買ってしまった。でも、でも、みんなびっくりするんですもん。

ウメさんはどうも僕と同じく社会的にアレな立ち場でいらっしゃるようだったので、つい「まだ若いから大丈夫ですよ」などと年長風吹かせた口を叩いてしまったが、今思うに僕こそが一番社会的にアレだという
ツッコミが各自の心中でなされていたに違いない。

「ポックンお腹どうしたん!めっちゃ出てるやん!びっくりした」 普段は数の少ないキカンボ君から驚きを隠せない様子で指摘されるとさすがに僕も気恥ずかしくなってくる。 身重だという言い訳が通用しない自らのセクシャリティをこの時恨めしく思った。
さて、キカンボ君との3月の初対面時に「ポクロさんと雰囲気の似た友達がいるんですよ。でも友達の方がかっこいいですけど」と聞かされて以来、僕の脳内で眼鏡男子の座を争って激しくおしくらまんじゅうを繰り広げて来た仮想敵nomusi君がお越し下さるという事前情報を得てこの日は気もそぞろだった。
眼鏡男子の地位を危うきものにする未知なる眼鏡の登場にすっかり焦りを隠しきれない僕は、SINGLESへ向かう道すがらペコリさんを質問攻めにして「すごくかっこよくておしゃれさん」なる芳しくない噂を引き出していたのだが、まさかこれほどまでとは、という素敵眼鏡男子だった。
ひーちゃんさんと連れ立って来られたakiyoさんが「岸田繁に似てますね」と話しかけておられたがまさに同感である。
ウメさんの大きくてらっしゃるお声をシャッター音の隠れ蓑に、何度も盗撮を試みたのだがその企みは果たされず、最後は懇願調でどうにか被写体となって頂いた。 後にnomusi君も僕を隠し撮りしていたと聞かされたが果たしてそれはお腹のぽっこりが際立ったひょうきん画像だったそうだ。 妊娠説が受け入れられないのなら季節外れのスイカを半玉隠していたという線で手を打ってもらえないか。

なぎら健壱に似てますね」
nomusi君に贈られた賛辞とは対照的に、akiyoさんの僕に対する第一声は初対面とは思えない辛らつなものだった。 このなぎら発言を境に僕とakiyoさんとの間にはグランドキャニオン級の断絶があからさまに見てとれたはずだ。
かつて僕を泉ピン子呼ばわりした不遜発言の第一人者ぎぃやまさんがお二方の近くに腰を下ろすと、そのエリア周辺に対する僕の憎悪はいよいよ隠しきれないものとなった。 オーダーを受ける度に勃発する激しい睨み合い。
時にはオーダーを拒否、時には「みんな死んだらええねん」と世を呪う発言まで飛び出して一触即発の雰囲気。
しかし夜も更けて多少眠たくなると荒んだ僕達の心にも平穏が訪れ、やがて「まーちゃん」「あきちゃん」と呼び合うほどに僕達のわだかまりは消え去ったのであった。
ひーちゃんさんは一見するとのほほんとした空気を醸しておられるが、ことお笑いの話題になると身を乗り出して激しく食い付くなど飾らないアグレッシブネスが周囲の心を捉えて離さないお方だった。

ぎぃやまさんに頂いたケーキは希望者殺到のため僕はクリームを少し舐めただけ。しかし僕の不手際によりぎぃやまさんは一かけらも口もすることが出来なかった事を愚痴ることしきりでかなり根に持っているのではないかと推測している。

「今日は一杯だけ」と言って止まり木に腰掛けたたかしやまさんだが終電を逃してヤケになると、ギターを手に取ってサニーデイ「恋に落ちたら」FISHMANS「BABY BLUE」を弾き語ってくれた。
たかしやまさんには夜も深まり朝が近くなったあたりからカウンターに入ってもらうわ、閉店作業を手伝ってもらうわでお世話になりっぱなし。ありがとうございます。
始発までの時間、ペコリさんのフレーバーコーヒーを飲んだり、キリンジライブ
DVD、小島麻由美PVを流したり、まったりと時間を過ごす。 しばたはつみ「シンガーレディ」、EVA「MOON RIVER」の反応が良かったのは嬉しかった。

さてSINGLESとして喜ばしいことに、ひーちゃんさん、akiyoさんのお二人がSINGLESに興味を持ってくださったご様子で近々説教バー(マスターになるための講習)を受講されるとのこと。
そしてキカンボ君も本気でマスターデビューを考えておられるという。
ぎぃやまさんはいち早く8月の『ソフトロック〜想い出の日曜日〜』でマスターを手伝って頂いたが、先日説教バーを講習されて晴れて正式マスター登録を済ませたばかりで、2006年も新しいマスターが誕生しそうだ。

みなさん、またSINGLESでお会いしましょう。