2005年を振り返る

晦日ともなるとテレビ、新聞、日記、どこに目を向けても話題は2005年の総括一色だ。
人間はかくも反芻する生き物なのかという気もしてくるが、僕も過日SINGLESマスター史をリストアップしているあたり、そこは同じく囚われの身にある一人なのである。
さりとて今年は趣味分野に取り立てて動きの見られなかった年ということもあって(音楽などこれほど聴かなかった年はない)、それならばいっそ関心の持ちようがない分野を敢えて振り返ってみることにしようと思う。
以下2005年の調髪事情を振り返る。


■1/14
いつも予約をせずに行くために一時間ほど待たされる。
「長さは大体そのままで、後ろをすいてもらえますか」
いつものように曖昧なリクエストを出すと店長は直ちにカットにかかる。
この注文が形ばかりのものだということは僕も店長もよく知っている。
僕は散髪したという実績が欲しいだけだし、店長は僕がいかなる成果も甘受すると知っているので明らかに手を抜くのだ。
果たして出来上がりはいつももみあげの長さが左右不均一だったり前髪だけ物凄く凄く長かったりするのだが、それは決して改められることなく慣例行事のごとく脈々と繰り返される。
帰宅して母に「どこ切ったん」と尋ねられる。


■4/16
「長さは大体そのままで、後ろをすいてください」
帰宅して母に「どこ切ったん」と尋ねられる。


■7/3
「長さは大体そのままで、後ろをすいてください」
占いに明るくはないが僕はきっと変化よりも安定を好む天秤座なのだろう。
帰宅して母に「どこ切ったん」と尋ねられる。
母はマイペースで誤解しやすいみずがめ座なのだと思うことにした。


■9/15
思い切って「今日は短かめでお願いします」と言ってみる。
旅行を前にしてエキゾチックな変身を渇望する機運が高まっていたのだ。
「特に後ろはざっくりすいてください」とお願いすると、
「え?すく、ってどういう意味かおわかり、ですよね?髪が減るってことですよ?いいんですよね?ヒャヒャヒャ」と大変嬉しそうである。
確かに最初に自虐ネタを口にしたのは僕だったが、それは薄毛進捗状況に対する忌憚ない率直なご意見を聞き出すのに止むを得ないものだった。
どうもこの店長はいささか図に乗り過ぎるきらいがあるらしい。
「うわー、すっごい毛量ですよねえ」
いかにもネタ振りだと言わんばかりの意味あり気な口調。
スルーするわけにもいかず、渋々応じる形で「横と後ろだけがね」と返してみたところ、店長はカットする手を止めるとゆっくりと言い聞かせるような口調でこう言い放った。
「いいえ。村田さんのトップは薄いんじゃなくて毛が細いんです」

そんなやりとりを苦に僕の足はかれこれ4ヶ月近くも遠退いている。
とは言え店長をつけあがらせてしまったのは一重に僕と僕の毛の責任だ。
今後店長に劇的な心境の変化が訪れない限り、粛々とザビエり行く僕の毛髪周辺への執拗な弄りは来年も収まりそうにないのである。