ミスマッチ

駅の改札を出てぼんやり歩く朝。コンビニの前を通過したその瞬間ぎょっとして振り返った。
つい今し方、自動扉の向こうに消えた男性の残像を認識するのに一拍のタイムラグを要したのである。
彼が僕の目を釘付けにしたのは、腹巻にすててこ姿と一分の隙もなくステレオタイプな日本人中年クールビズに身を包んでいたからに他ならないが、それを一段と際立たせていたのはこのもっちゃりとした軽装におよそ似つかわしくないスラリと若々しい肢体のせいだ。
傍目にミスマッチと映る取り合わせ。古き良き家長制度を尊ぶ若き思想家が、形から入る世代らしく表現の場をコスプレに見い出したのかもしれない。
そう考えて携帯カメラを携行し田代マインドでおずおずと近付いてみると、この仮想思想家は意外にも老人に区分されて然るべき妙齢と思しい。
どうやら意志に反して体ばかりが育ち過ぎたおじいさんというのが真相のようだ。