節穴だらけ

poqrot2005-07-04

「ちょっと!それはあかんやろ!」
今まさにお出かけせんというところで妹に引き止められた。
「お尻丸見えやで!」

股擦れによるジーパンのほころびを見つけてからもう2ヵ月が経つ。物持ちの良さで名が轟く僕も一旦は荼毘に伏すべき時と観念したが、合わせ鏡による再三のチェックの結果、穴の所在が股下部分に程近く履いて目立つような位置にはないと判定されたのと、一張羅というジーパンに似つかわしくない特殊事情も手伝って普段着継続にゴーサインが下ったのだった。
とは言え、人として最もデリケートな部位のトラブルだけに僕もその取り扱いには過剰なほどに神経を尖らせてはいた。とりわけセンシティブだったのが階段の上り。膝の屈伸による臀部付近の急激な伸縮は即露出狂認定の致命傷になりかねない。そのため、カバンを後ろ手に持ってガードするジェンダーレスなディフェンス感覚と、膝のバネを使わずに足首のキックのみで駆け上がる不自然かつ剽軽なジャンプの獲得はこの時期必要不可欠なものであったと言える。
それもこれも全て図抜けた物持ちの良さに起因する。よくよく考えてみれば、穴が空いているのは何もジーパンに限ったことではない。スニーカーはかれこれ一年前からパックリご開帳であるし、靴下もまた7割方つま先がほころびているために、座敷に上がらねばならぬような不測の事態においては穴部分を指先で挟む足袋的抵抗を講じる必要に迫られる。

妹に指摘されて数カ月ぶりに後ろ姿を鏡に映してみると、小さかったはずのほころびはお尻全土に広がり、裂け目からはひも状のものがぶらりと垂れ下がっていた。
またしてもぶらり一人旅。
お尻という名の個人情報を保護できなかったツケはあまりにも大きい。