毛玉がもたらす新提案

poqrot2005-06-25

このところ愛犬マシューの抜け毛が目に余るどころの騒ぎではなくなってきた。
毎日ブラッシングしているというのに一向に収束の気配を見せず、テーブルの上に堆く積もる毛玉は度を越しててんこもりの様相を呈している。
そこでこの並々ならぬ分量の抜け毛を素材にかつらをあつらえてみたところ、自毛とあって馴染みも良くとてもよく似合ったのだった。
その瞬間この動物実験が僕ら薄毛予備軍の前を照らす一筋の光明にはたと気づく。
毎日、お風呂場の排水溝に溜まった抜け毛を集めて、お出かけ前に気になる患部(あるいは恥部と呼んでもいい)にそっと敷き詰めるだけで自然極まりないボリュームアップを果たせるということに。

この増毛法の最大の美点はなんと言っても自毛ゆえに後ろめたさが希薄である、ということだろう。
談笑のリズムに合わせて毛髪がハラハラと舞い落ちようとも、フェイクにはない本物だけの自信が裏付けとなって、むしろ一層アクティブな動作さえ期待できるかもしれない。
また失態を犯した場面では、深々と下げた頭からバサッと落ちた抜け毛の固まりがこれ以上ない謝意を表明してくれるために、それ以上の叱責から解放してくれるという利点もある。
いくら技術が巧妙になろうとも人工、偽者という変え難い出自が忌み嫌われるしかなかったカツラ業界。そこにこのTPOまでわきまえた増毛法の登場はエポックメイキングとなりうる訴求力を持つのではないか。

薄毛とクセ毛の双方が苛む自身の毛髪を自嘲の意味を込めて「薄いクセに毛」と名付けた僕の野良犬ばりに荒んだ心を救済してくれるかもしれないとの期待は大きい。