路上

心斎橋筋商店街を歩いていたら、マイク一つで手持ち無沙汰感いっぱいに歌う路上ミュージシャンの姿を見留めた。楽器などには興味ない俺の歌を聴け、とばかりにカラオケを背に、切なく甘酸っぱく歌いあげるその心意気に胸打たれ少しばかり見とれていると、彼の友人と思しい女性が駆け寄ってきて僕にフライヤーを手渡した。
        1thシングル発売中!

ファ、ファーt、、、ファースシングルとお読みすればいいのか。
伝えたいのに伝えられない、届けたいのに届けられない、切なくてもどかしい彼の歌心がこんなところでも余すことなく表現されているとは。
かけ違えたボタンがセカンス、サースシングルをドロップしてしまうその日まで、親切な人との出会いが彼に訪れないでいて欲しいものだ。