歩行者天国そこは猫なんてムリ

日常からちょっとした逸脱を試みたい。
常にそんな欲望を胸に秘めている僕にとって、他人の目を気にせず振舞える人々はある種、羨望の的だ。

ここで気をつけていただきたいのは、あくまでも「ある種」であり、全面的な支持をかの人々に振りまいているわけではない点である。
全面的にイエスを表明した時点で確かに僕は何かから自由になり得るが、そこで勝ち得た自由がはたして、マイミクにおける女子率の高さを連日指摘されているようなネットアイドルとしての僕にプラスに作用されるかどうかといえば、あからさまにノーだ。

一度手に入れたネットアイドルの座は死守したい。
たとえ元々の知己の方々からはすでに僕のパブリックイメージが
「他人の目を気にせずネットアイドルとして振舞っている人」
というものであったとしても、死守したい。
そしてこの必死の捨て身アピールまでもが僕を偶像視する一助になるだろう、
とそこまで計算していることに知己の方々は気づくべきだ。
こちらだって漫然とネットアイドル業を営んでいるわけではない。
すべてが小倉優子もかくやの計算の内に行われている言動なのである。

何の話だったかわからなくなるような迷走を日記上で始めるのは悪い癖だ。
常日頃発揮される方向感覚のなさはこんなところにまで影響を及ぼしている。
他人の目を気にせず振舞える人、の話だった。
以降の数段落は、タイトルを「ぼくのうらやましい人だから」とする。

金曜の夕闇の中で混雑する四条河原町の交差点を、執拗にクラクションを鳴らされながらも無理に渡る一人の男がいた。
横移動するなんて気は確かかい?
と問いかけたくなるようなその動き。
思わず視線を釘付けにしていると、男は何事か叫びだした。
耳をすませる。

「猫は猫だ!それ以上でもそれ以下でもねぇ!」

叫ぶ詩人の会だ。
それもドリアンではなく大麻でつかまったほう。

と、いま冗談で書いたつもりだったが、あれ、ひょっとして本物だったりして。
捕まりブチこまれシャバに出るには十分な時が流れているはずだ。

思わぬところで体験した「あの人は今」。
もう本人だったと決め付けているが、真相を確かめようもない話は、自分が得する方向で信じていたほうがいい。
だから、僕に会ったことのない方も、僕はいたってメガネの好男子であり、ましてや断じてハゲてなどいない、と信じていてほしい。
ぽっくんからのお願い。

知己の方々がモニターの向こうで
「もうわかったからそれ以上のモテたいアピールはやめろ」と猛烈な制止の波長を出している気配を感じ取りつつも、土下座せんばかりにそう主張。

今、僕はある種の羨望の的となっている自分を感じている。


※この日記の覆面作家id:nigoさんでした。