マーシー、マーシー、マーシー

「田代3度目の逮捕!」
仕事からの帰途、妹からのメールで僕はこの報道を知ることになりました。
常日ごろ、田代に関して並々ならぬ関心を示してきた兄に対し、妹は訃報でも知らせるかのように簡潔な文章を送りつけてきたのです。
「またやっちゃったか、マーシー。」
そう一人ごちて帰り道、田代について思いを馳せてみました。


1998年、フジテレビで放送されたボクシングの日本タイトルマッチ。
この特別番組の司会を勤めていたのが田代と藤原紀香でした。
コアなボクシングファンの間では歴史に残る名勝負として語り継がれるこの試合を、僕は別の意味合いでもって深く記憶の底に留めています。
この番組における田代は数少ない発言機会のほとんど全てを噛んでみせるというイリュージョンじみたパフォーマンスを繰り広げていたのです。
おそらくはお茶の間に何一つ伝える事が出来ない彼の瞳は画面越しに潤んでいるように見えました。
最初は紀香もその様子に度肝を抜かれたそぶりを隠しきれないようではありましたが、途中からは何事もなかったかのように渇いた笑顔で進行を続け、かたや田代も何事もなかったのようにテキパキと噛み続ける。
その非情なまでのコントラストがただただ僕の胸を締めつけました。
あれから6年、その後の彼の転落について説明の必要はないでしょう。


僕と田代は似ている、そう感じます。
それは名前が同じマサシというだけではない、もっと大切な何かが。
僕はチョビヒゲこそ生やしてはいませんが、十分チョビハゲであるし、シャブ中ではないけれど、シャブを打っても食べようとは考えやしない分量の糖摂取を止めようとはしません。
そういう意味では僕らマサシ達はいつだってジャンキーだったのかもしれない。


そして僕達を深く深く結び付ける決定的共通項、盗撮。
彼の盗撮対象がスカートの中やお風呂場であったのに対し、僕のそれはスポーツやライブとフィールドこそ異なれ、撮影時における無許可感やそれに伴うチラ見感、そして憑りつかれた何かのためには他人の敷地内で有り得べからぬ振る舞いも辞さぬ、その圧倒的に破廉恥なスタンスがどうしようもなく酷似しているのです。


だとすれば僕もいつか囚われの身になるかもしれません。
その時、僕は田代以上にウィットに富んだ名文句を残せるのでしょうか。